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雪の中、収穫作業に追われる

加茂シキミ生産組合
組合長 田中 洋一郎さん(45)

加茂シキミ生産組合
組合長 田中 洋一郎さん(45)

花卉

たたずまい凛と。暮らしに寄り添うシキミを作る

 豊かな自然に囲まれた津山市加茂地区で、約50年前から栽培が始まったシキミ。地域によって「シキビ」「花枝」「ハナノキ」などとも呼ばれ、仏教の葬儀や法要、仏壇に供えられ、古来より日本人の終生に寄り添ってきた樹木です。
 加茂シキミ生産組合の田中洋一郎組合長(45)は、父親の後を継ぎ産地を盛り立てています。

栽培を始めたきっかけは

 父親が植えた約60アールの畑で、幼い頃から手伝いをしていました。父亡き後、遺志を引き継ぎました。今は会社員をしながら、盆・正月・彼岸の年4回のシーズンを中心に出荷しています。
 シキミは植えてから収穫できるまで10年程度かかるものの、植え替えがいらないことと、成長が早く1年を通して繰り返し収穫できるのが強みです。伸びた枝を区画ごとに切り取っていきます。

作業効率アップへ新たな挑戦

 代替わりしてからは、父や母から学んだ栽培方法だけではなく、先輩生産者の方から積極的に教わり、葉が青々とし厚みがある、高品質なシキミの生産に努めています。
 昨年の春からJAや普及指導センターと協力し、樹の仕立て直しのモデル実証を行っています。背の高い樹は収穫や防除の作業がしづらいため、低木に仕立てます。
 父から引き継いだばかりの時は、大胆にせん定することができなかったのですが、実証試験や実績を重ね、新芽をまっすぐ伸ばす空間を作るよう、できるだけ根元から切ることで、的確な作業ができるようになりました。

担い手を育成するために

 担い手対策としてJAと協力し、高齢化などで栽培を休止しているほ場を調査する取り組みを始めました。新規就農者がすぐに栽培に取り組めるようほ場を貸し出し、参入のハードルを下げる仕組みづくりを行っています。
 持続可能な生産活動にするため、積極的に新規就農者を募り、先輩生産者の栽培技術を作業マニュアルに落とし込み、次の担い手に技術を伝承したいと考えています。
栗の写真
シキミ
 シキミは常緑樹で、葉や茎などに毒があります。独特の香りがあるため、邪気を払うなど仏壇や墓を守るために供えられてきました。「四季美」が転じて「シキビ」、果実の毒性が強く、「悪しき実」の「ア」という字が略されたなどが名前の由来といわれています。
 加茂シキミ生産組合は、JAを通じて市内のホームセンターに契約出荷し、県内外の店舗で、盆・正月・彼岸を中心に販売しています。

空から望む - 津山市加茂町

Vol.34津山市加茂町の写真
「水と森の郷」といわれる自然豊かな津山市加茂地区。画面上部の鳥取県との県境から延びる岡山県三大河川の吉井川の支流、加茂川と、鳥取県智頭を結ぶ因美線が幾度も交差し、人々や田畑の営みを支えています。中央左に見える常緑樹のシキミが、冬色の水田の中で緑を放っています。
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